ほうろく屋 杉崎さんのお話 第6話 見向きもされない菜種油
ほうろく菜種油(伝承油)は腰が強く、酸化しにくく捨てずに使いきれる菜種油。
食用油は食べる油。揚げ物やてんぷらなどでも、ゲップや胸やけもなく、お腹いっぱいになるまで食べられる。むしろ、途中で食べれなくなる方がおかしい。
また、素材本来の旨味や甘味を引き出し、余分な味付けなど必要なく、美味しくいただける。
さて、ついに平成24年7月、食用油脂製造業の許可を受け菜種油販売を始める。
この頃、原料菜種は年間3t。油としては900ℓほどだった。
もちろん、この菜種油に惚れ込み生み出した商品。たくさん売れると思っていた。
しかし、現実は違った。サラダ油の数倍の価格、店頭に並べても見向きもされず、皆、通り過ぎていくだけ。売れないのだ。
販売は全くの素人で、右も左も分からず教えてくれる人もいない。
僕は先代妻 たけ子の作る唐揚げを思い出し露店営業許可取得、毎日試食販売の日々。
そして、循環型コミュニティーの敷地内に飲食店営業許可取得、小さな揚げ物屋をオープン。パートナーは全て手作りでコロッケ、豚カツ、唐揚げなどを販売し続けた。
そこで、不思議な光景が起きた。
通りすがりのお客様は商品(菜種油)には目を向けないが、試食を食べると皆が言う『凄く美味しい』。
そして、用事が済むとまた戻ってきて、揚げ物を買って帰る。菜種油より惣菜が売れた。
そんな毎日の中でも菜種栽培、菜種作付けのお願いに廻り、原料菜種が少しずつ増えていく。
原料が集まる→農家様へ現金での買い取り→菜種油が売れない→お金が苦しい→負のスパイラル。
なんとしても菜種油を売らねばならぬ。
先代妻 たけ子に相談した。
『この油を一番実感してくれている人は?』
たけ子は即答した。
『津島市にある、りんねしゃさんがいるよ。昔、そこの奥さんを娘のように可愛がってねぇ。菜種油も販売してくれていた』と。
僕はすぐ(株)りんねしゃ二代目 飯尾裕光氏に連絡を取った。
『先代 大嶽喜八郎の菜種油を継承し、自分でも納得のいく油ができた。味見していただき、会社での判断を』と。飯尾氏は優しく現在の状況を聞いてくれた。
また、たけ子も りんねしゃ様に電話していた。
そして、認めていただき大嶽製油所同様の付き合いで販売を援護。
『ほうろく菜種油』と命名し、他、りんねしゃオリジナル『荒搾り』『生搾り』と一つの原料で
クオリティの違う3種類が生まれ、さらに販売を強化。
少しずつ多くの方の元へ行き、ほうろく菜種油を身体で感じ応援してくれる皆様が動いて下さり、花粉をつけ、今、花が咲き始める。
変態扱いされても突き進んで良かった。世の中は確実に変わって来ている。
僕は、ほうろく菜種油を通して食、育、健康、そして生き方を伝えるのだ。
- a seed 現代自然派調理研究家&プロデューサー Jeff -
元々臨床検査会社に勤めていた所から健康的な食事に
興味を持ち、現在は静岡県焼津市の会員制レストランで
食事と健康についての研究や料理プロデュースをやらせて頂いております。
https://www.facebook.com/jeffrielau
過去記事は目次代わりにpinterestに貼ってありますので、いつでもご覧ください。
彦根市の坂根龍我さんの漆作品などの一望は waca-jhi's diary 。